【文脈】正しい答えより、正しい土俵を探す

構造的フロネーシスのテーマ「文脈」を示すビジュアル

言葉は通じているのに、話が通じていない。そんなときは、文脈がずれているのかもしれません。

同じことを話しているはずなのに、どうも、かみ合わない。そういうとき、私は、言葉そのものより先に、その言葉がどこから来たのかを、たどります。

この記事で分かること

  • 文脈とは何か。空気を読むこととは、どう違うのか
  • 文脈をたどる前に、反応が先に立ってしまうのはなぜか
  • 文脈が混ざると何が起きるのか。どう分け直すのか
  • 立場と前提を分けて、文脈をたどり直すための紙一枚
目次

1. 文脈とは?背景を知らずに、直観だけでは判断できないもの

「生きづらかった自分に「文脈」という言葉を自分の辞書に書き加えた。」

文脈は、あとから、私の辞書に書き加えた言葉です。書き加えた、ということは、それまでの私の辞書には、その言葉が無かったということです。

同じ出来事でも、どこに置かれるかで、意味が変わる。書いてしまえば、当たり前のことです。けれど、その当たり前を、言葉として持っているかどうかで、自分の見え方は、ずいぶん変わるのだと思うのです。

では、文脈とは何か。私の答えは、これです。

「文脈とは背景を知らずして直観だけでは判断できない。」

直観は、速いです。速いことは、悪いことではありません。ただ、直観が見ているのは、目の前にある言葉や出来事だけです。その手前にある背景までは、直観は連れてきてくれません。

「文脈を変える」とは、自分を変えるのではなく、自分が立つ場所を変えることです。そして文脈とは、目的に対して、人・役割・期待・環境がどう噛み合うかを見直すことです。

この記事は、その一歩手前の話です。場所を変える前に、まず、いまの場所が、どんな過程でできあがっているのかを、たどる話です。

2. 文脈を読むとは:言葉の節々から過程をたどること

文脈を、一つの動きで言うと、過程をたどることです。

「その過程とかそんな感じだと思うんだけど。」

「言ってる言葉の節々に考察して、こういう風になるだろうなって、辻つまってわかるじゃないですか。」

相手の毎日を、ずっと見ているわけではありません。それでも、言葉の端々を拾って並べていくと、その人がどんな道を通って、いまの一言にたどり着いたのかが、少しずつ見えてきます。その道のりが、文脈です。だから、この柱の動きを、私は「過程をたどる」と呼んでいます。

そこまで読んで、こうなっているのかもしれない、と考える。そのこと自体が、私にとっての「考える」です。

空気を読むことと、文脈を読むことの違い

私は、場の空気を読むのは、あまり得意ではありません。そのかわり、言葉を一つずつ拾って、その並びから過程を組み立てることは、できるほうです。

空気を感じ取ることと、文脈をたどることは、似ているようで、別の動きです。

空気は、いま、その場に漂っている気配です。文脈は、そこまでの道のりです。気配は、その場にいないと分かりません。道のりは、その場にいなくても、言葉の並びから、ある程度たどれます。

空気が読めなくても、文脈は、たどれる。この違いに、私は、ずいぶん助けられてきました。

3. 話がかみ合わない原因:文脈をたどる前に反応している

それでも、たどるのは、簡単ではありません。人は、たどる前に、動いてしまいます。

「その背景や文脈を辿る前に反応や判断をしてしまう。」

これは、誰か特定の人の弱さの話ではありません。人の頭の、ふつうの動きです。

言葉は、目の前にあります。過程は、目の前にありません。だから、見えている言葉のほうに、先に反応してしまう。反応したあとで、「そういう意味ではなかった」と分かることも、あるかもしれません。

常識も、同じです。

「誰かの常識は誰かの非常識だし、誰かの非常識は誰かの常識。」

常識は、その人がたどってきた過程の中で、少しずつできあがったものです。過程が違えば、常識も違う。その違いを知らないまま反応すると、相手の言葉を、自分の過程の中で読んでしまいます。

人は、立場で考えているのではありません。

「共有している「前提」で判断している。」

立場が違うから、話がかみ合わないのではない。共有している前提が違うから、かみ合わない。そう見ると、見るべき場所が、一つ下の層に移ります。

正義の味方と、いたずらをする敵役。どちらにも、それぞれの考えがあって、自分が正しいと思って動いています。

「どちらが正しいかって言われると、それを決めるのは、捉えてる側の話であって」

悪いことをかばう話でも、勧める話でもありません。人に迷惑をかけてはいけない、という倫理は、別の話として、当然あります。

良し悪しを決める前に、一度フラットに見る。それぞれがどこから来たのかを、たどる。たどってから、比べる。この順番を逆にすると、比べているつもりで、自分の前提を押しつけてしまいます。

4. 文脈が混ざるとどうなる?前提を分け直す一言

たどらないまま進むと、文脈が混ざります。私の失敗を、一つ書きます。

「文脈が混じった結果、1時間かけてゴミを作ってしまった。」

やり取りの中で、別々の話の前提が混ざってしまった失敗です。

作業は、進んでいるように見えます。手も動いている。けれど、土台の前提が二つ混ざっていると、積み上げたものは、どちらの話にも合いません。違う目的の場所へ向かってしまえば、戻るのにも、余計な燃料がかかります。

混ざったと気づいたときの一言は、これです。やり取りが、話の芯から外れた場面です。

「いや、そうじゃなくて、何の話をしていますか?」

この一言は、相手を責めるための言葉ではありません。たどり直すための言葉です。いま、どの話の、どの前提の上に立っているのか。そこを確かめ直せば、混ざったものを、もう一度分けられます。

混ざっているかどうかは、たとえば、こんなところに出るのかもしれません。

  • 同じ言葉が、二つの意味で使われている
  • いつの話なのかが、人によって違う
  • 誰の立場から見た話なのかが、途中で入れ替わっている

どれも、言葉の層だけを見ていると、気づきにくいものです。一つ下の前提の層、さらにその下の過程の層まで降りて、初めて見えてきます。

5. 文脈のあとに:たどってから比べ、目的に戻る

たどってから、比べる。たどってから、目的に戻る。たどった過程を、別の場面に重ねる。文脈は、ほかの見方を始める前に、足場をそろえる役目です。

文脈のレンズの言葉は、「正しい答えより、正しい土俵を探す」です。

答えを急ぐ前に、いま立っている土俵が、どこから来たのかをたどる。土俵が分かれば、何を比べればいいのか、何に戻ればいいのかも、見えてきます。

一行の判断知

反応する前に、その言葉がどこから来たのかを、一度たどる。

読者に残す A4 一枚

「文脈」:読者に残す A4 一枚

題:「どこから来た話か」をたどる紙

欄欄の中の問い
出来事(一行)何が起きたか。何を言われたか。そのまま一行で。
立場の欄自分から見ると、どう見えるか。相手から見ると、どう見えるか。関わっていない第三者から見ると、どう見えるか。
前提の欄いま、相手と共有している前提は何か。共有していない(かもしれない)前提は何か。
たどる問いこの話は、どこから来たのか。相手は、どんな過程を通って、この一言にたどり着いたのか。いつの話か。
混ざっている話題を分ける欄話題A/話題B。同じ言葉が、別の意味で使われていないか。
たどったあとの一手反応する前に、何を一つだけ確かめるか。

明日ひとつだけやること

全部は、やらなくていいと思います。

明日、話がかみ合わないと感じた場面を、一つだけ選んでください。反応する前に、心の中で一度だけ、「これは、どこから来た話だろう」と問う。そして夜に、その答えを一行だけ書く。

それだけです。正しく読めたかどうかは、気にしなくて構いません。たどろうとした一行が、文脈をたどる、最初の手がかりになると思うのです。

この記事の線引き

  • 私ひとりの経験と、私の言葉から組み立てた考え方です。誰にでも当てはまるとは思っていません。
  • 「相手の過程をたどれば、必ず分かり合える」という話ではありません。たどっても、分からないことはあります。
  • 相手の言い分を、すべて受け入れよう、という話でもありません。悪いことをかばう話ではありません。
  • 空気を読むことを、下に見る話でもありません。空気を読むのが得意な方には、その方の読み方があると思います。
  • 一緒にやり取りした相手の名前や、やり取りの細かな中身は書きません。

最近「かみ合わない」と感じた一言は、相手にとって、どこから来た言葉だったでしょうか。

ほかのレンズも、気になるところから読んでみてください。

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