【類推】表面を真似ず、関係の構造を別の場面へ移す

構造的フロネーシスのテーマ「類推」を示すビジュアル

類推が役に立つのは、分からないものに出会って、最初の一歩がどこにも見つからないときです。

説明を読んでも、言葉が頭の上を素通りしていく。そんなとき、私は、まったく別の、よく知っているものを思い浮かべます。

この記事でお伝えしたいことは、ただ一つです。

同じ形をしたものは、色が違っても、同じように扱える。

類推とは、この「同じ形で、色が違うもの」を見つける動きです。

この記事で分かること
  • 類推とは何か。どんな動きをする考え方か
  • 類推のやり方:具体と抽象を行き来するとは、どういうことか
  • 振り返りに類推を使い、別々の出来事から同じパターンを見つける方法
  • たとえ話が伝わらないとき、類推の中で何が起きているか
目次

1. 類推のやり方:分からないものは、好きなものに置き換える

分からないものは、自分の好きなものに置き換えます。

「何かものごとがわからない場合に自分の好きなものに置き換えるとわかりやすい。」

好きなものは、細かいところまで知っています。どこで何が起きると、何が困るのか。順番も、つながりも、体が覚えています。

その知っている形を借りて、分からないものを見る。それだけで、入り口が見えます。

私の場合、借りる先の一つは、長くいた電気通信の仕事です。私は、電気通信の業界に20年いました。

WordPress とサーバーの関係も、電気通信の形で見ています。

「電気通信のインフラと考え方は同じ。交換機と電柱みたいなもの。」

WordPress と電気通信は、見た目がまったく違います。けれど、考え方は同じです。上に何があり、下に何があり、どこでつながっているか。その並びが同じなら、知っている側の知識で、分からない側を見られます。

食べ物に置き換えることもあります。何でもこなす AI の使い心地は、幕の内弁当です。

「何でもできる幕の内なんだけど、食べたいときに食べたいというよりかは、まぁ、妥当だからいいかみたいな。」

道具と、お弁当。色は、まったく違います。けれど、形は同じです。何でも入っているけれど、選ぶ決め手にはなりにくい。

2. 類推とは?同じ形で、色が違うものを見つけること

ここで、「形」と「色」を分けておきます。

形とは、ものごとの並び方です。何が先で、何が後か。何と何がつながっているか。

色とは、その形が置かれている場所です。分野、規模、道具、登場する人。

類推は、色の違いをいったん脇に置いて、形が同じかどうかを見る動きです。

二つの活動を並べて見たとき、答えはこうでした。

「規模が違うだけで、構造と思想設計同じじゃん。」

大きいか、小さいかは、色の違いです。形が同じなら、片方で分かったことは、もう片方でも使えます。

ここに、もう一つの動きが重なります。具体と抽象の往復です。私の考え方は、この往復でできています。

「抽象的なものを一度具体に戻して、また抽象概念に戻しているっていう、イメージなんです、自分的には。」

「私はどちらかというと、具体と抽象を行き来して構造として形にする傾向が強いと思います。」

具体のままでは、形は見えにくい。色のほうが、先に目に入るからです。一度、抽象に上がって、形だけを取り出す。そして、別の具体に降りる。

この、上がって降りる往復が、類推の中で起きていることだと思うのです。

3. 振り返りに使う類推:別々の出来事から同じパターンを見つける

類推は、分からないものに出会ったときだけの道具ではありません。過去を振り返るときにも、働きます。

振り返ると、私が結果を出してきた場面は、どれも同じ形をしていました。現場で人を動かし続けることではなく、数字と構造で、全体を整えることです。

約4,500回線の切替では、対象の回線を全部洗い出し、Excelで整理して、日ごとの計画に分けました。約30日かかっていた作業を約7日にしたときは、業務の流れと、Excelでの管理を見直しました。

出来事としては、別々です。それでも、並べると、同じ形が出てきます。大きなものを、扱える大きさに切り分けて、全体を整える形です。

これが、類推思考です。

「束ねられた時に、それって何のパターンだろうねって言った時に、まさに類推思考、だと思ってるんですよ。」

バラバラの具体を束ねて、名前をつける。そこまでは、自分を知る動きです。そのあとで、「これは、何のパターンだろう」と問う。すると、その形を、次の場面へ持っていけます。

たとえば、仕事で、何度も同じところでつまずくことがあるかもしれません。出来事は毎回違って見えても、形を取り出すと、同じ順番で起きている。そう見えたら、次につまずく場所に、少し先回りできます。

4. たとえ話が伝わらないとき:類推は相手の知っている範囲で届く

ただ、類推には弱いところがあります。たとえ話の知識の広さに、頼ってしまうことです。

「アナロジー思考が好きすぎてそっちに思考を寄せてしまう。理由は構造として見てから仮説を立てて検証しにいくので例え話を良くする、デメリットは例え話の知識の広さに依存すること。」

たとえは、知っているもの同士のあいだにしか、橋を架けられません。自分が知っていても、相手が知らなければ、その橋は、相手の岸まで届いていません。

知見に差があると、たとえは伝わりません。

「アナロジー思考でも知見の差で伝わらないと入り口が見つからない。」

これは、たとえが悪いのでも、相手が分かっていないのでもありません。知っている範囲が、重なっていなかった。それだけのことです。

だから、人に説明するときは、自分の好きなものではなく、相手の知っているものの中から、同じ形を探します。たとえの持ち主を、自分から相手へ移すのです。

5. 類推のあとは目的に戻る:たとえを手放すとき

もう一つ、気をつけることがあります。たとえが楽しくなると、たとえそのものが、目的のようになってしまうことです。

形を移すのは、分からないものを扱えるようにするためです。たとえ話が上手くなるためではありません。

形は、汎用にして初めて、ほかへ移せます。

「汎用的じゃないと他のものに当てはめられない」

色を落として、形だけにする。そうすると、別の場所へ運べます。けれど、運んだあとは、もう一度、いまの場面の色に戻します。何を分かりたかったのか。何を決めたかったのか。そこに戻って、たとえを手放す。

類推は、行って、戻る動きです。知っている場所へ行き、形を借りて、いまの目的に戻ってくる。

一行の判断知

形が同じなら、色が違っても、知っている道を借りられる。

読者に残す A4 一枚

「類推」:読者に残す A4 一枚

題:同じ形を探す一枚

欄1 いまの悩み(分からないこと)

  • いま、何が分からないか。一文で書く。

欄2 自分の好きなもの(よく知っているもの)

  • 細かいところまで、人に説明できる好きなものは何か。

欄3 同じ所(形)/違う所(色)

同じ所(形)違う所(色)
二つに共通する、順番・つながり・役割は何か違うのは、分野か、規模か、道具か、登場する人か
欄2で分かっていることのうち、欄1にも使えそうなことは何か色の違いのせいで、そのまま使えないことは何か

欄4 相手にも通じるたとえか(人に説明するときだけ)

  • このたとえに使ったものを、相手は知っているか。
  • 知らないなら、相手が知っているものの中で、同じ形をしているものは何か。

欄5 戻る目的(1行)

  • このたとえで、何を分かりたかったのか。何を決めたかったのか。

明日ひとつだけやること

全部は、やらなくていいと思います。

明日、分からないことに一つ出会ったら、「これは、私の好きな〇〇でいうと、何にあたるだろう」と、一行だけ書いてみてください。

当てはまらなくても、構いません。どこが同じで、どこが違うかが一つ見えれば、それが入り口になると思うのです。

この記事の線引き

類推で、正しさが証明されるわけではありません。似ていることと、同じであることは、違います。たとえで見えたことは、仮説として、いまの場面で確かめてください。

私ひとりの、考え方の癖の話です。私は、たとえで考えるのが好きなほうです。誰にでも合う方法だとは思っていません。

たとえ話は、私が実際に使ったものだけを書きました。

最後に、一つだけ聞かせてください。

いちばん細かく説明できる「好きなもの」は、何ですか。

ほかのレンズも、気になるところから読んでみてください。

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