結論から言えば、ストレングスファインダーは、私に「降格を自分から受け入れる」という判断をさせました。
普通に考えれば、降格は避けたいものです。
役職を失うことは、後退のように見えます。
積み上げてきたものを手放すようにも感じます。
それでも私は、部長代理という役職を手放し、経営企画への異動を志願しました。
なぜ、そんな判断ができたのか。
その背景には、ストレングスファインダーで知った自分の資質がありました。
はじめに——2021年夏、限界を迎えた日のこと
2021年の夏のことです。
当時、私は通信インフラ会社の部長代理でした。
35歳で管理職になり、そこから数年をかけて部長代理まで昇進してきました。施工管理、業務改善、経営企画のサポート。仕事の中身は変わっても、「組織のために何ができるか」を考え続けてきたつもりでした。
でもその夏、私は限界に近いところにいました。
6月には心療内科を受診していました。
眠れない夜が続いていました。
それでも、休日の呼び出しには応じていました。
お盆の深夜でも出動しました。
残業代は一切請求しませんでした。
「会社の損失を少しでも減らしたい」
そんな気持ちから、無償で対応していることもありました。
そんなある日、当時、私の部下にあたる人物から、厳しい言葉を受けました。
「今やっている仕事は、本来あなたがやるべきでした。なのに部下にやらせている」
「挑戦的ではないので、部長代理であることがおかしい。降格してもらえませんか」
「あなたのやる気のなさを社長に言いますよ」
頭の中で、いくつもの言葉が浮かびました。
休日も対応している。
残業代も請求していない。
深夜の出動も断っていない。
それのどこが「やる気がない」のか。
でも、実際に書いたメールの末尾には、こんな言葉が並んでいました。
「要するに私はやる気がないように見えるらしいです。私自身の見せ方や在り方にも問題があるのだと思います」
キーボードを打ちながら、自分でも気づいていました。
私は今、謝っている。
言われた通りに、自分の欠陥として引き受けようとしている。
でも、それ以外の言葉が出てこない。
そんな夜に、私はストレングスファインダーの結果を読み返しました。
ストレングスファインダーとは
ストレングスファインダーは、Gallupが開発した強み診断ツールです。
書籍『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 最新版 ストレングス・ファインダー2.0』(トム・ラス著)は、その代表的な解説書です。
[書籍リンクをここに挿入]
ストレングスファインダーの考え方を、私なりに一言でまとめるなら、こうです。
人は、弱みを直すことだけに力を使うよりも、もともと持っている才能を活かした方が、大きな成果につながりやすい。
診断を受けると、全34資質の順位が出ます。
たとえば、私の場合、最初に受けた2018年時点では、上位に次のような資質がありました。
- 収集心
- 戦略性
- 最上志向
- 未来志向
- 分析思考
情報を集める。
構造を読む。
選択肢を比較する。
より良い方法を探す。
未来の可能性を考える。
そうした動き方が、私の自然な傾向として表れていました。
大切なのは、ストレングスファインダーが単なる「自分探し」の診断ではないことです。
私にとって、ストレングスファインダーは、自分の使い方を知るための道具でした。
自分を無理に変えるためではなく、
自分の資質がどこで活きるのかを知るための道具です。
ストレングスファインダーから得た最大のアクションプラン
私がストレングスファインダーから得た最大のアクションプランは、これです。
資質を知ったら、今いる場所が自分の資質に合っているかを問い直すこと。 合っていなければ、役職を手放してでも、場所を変えること。
2021年、私は部長代理という役職を自ら手放し、経営企画への異動を会社に志願しました。
それは、降格を伴う判断でした。
周囲から見れば、後退に見えたかもしれません。
積み上げてきた役職を失う判断に見えたかもしれません。
でも、私の中では違いました。
役職を守ることよりも、資質が活きる場所に立つことを選んだのです。
ストレングスファインダーがなければ、この判断には至らなかったと思います。
「やる気がない」の正体
2018年に受けたストレングスファインダーの結果で、私が特に気になった資質がありました。
それが、活発性です。
私の活発性は、34資質中30位でした。
活発性とは、簡単に言えば、すぐに動く、実行に移す、行動を外に見せる資質です。
活発性が高い人は、考えるより先に動きながら形にしていく傾向があります。
一方で、当時の私は違いました。
まず情報を集める。
構造を読む。
選択肢を比較する。
最善策を考える。
そのうえで動く。
それが私の自然な動き方でした。
つまり、私のエネルギーは外側にすぐ見える形では出ていなかったのです。
ここで、ようやく腑に落ちました。
「やる気がない」と見られていたものの正体は、本当にやる気がなかったことではありませんでした。
私の資質の出方が、相手の考える“やる気の見え方”と違っていた。
これが、私の中での整理でした。
もちろん、これは相手が間違っていたという単純な話ではありません。
組織の中では、見える行動が評価されます。
声を出すこと、手を挙げること、すぐ動くことが、挑戦的に見える場面もあります。
ただ、私の強みはそこではありませんでした。
私は、目立つ形で前に出るより、情報を集め、構造を読み、判断材料を整えることで力を発揮するタイプでした。
問題は、私の意欲そのものではなく、私の資質が活きにくい場所にいたことでした。
私が選んだのは、役職ではなく場所だった
その夜、私はストレングスファインダーの結果を読み返しました。
収集心。
戦略性。
最上志向。
未来志向。
分析思考。
上位資質を見ながら、自分の自然な動き方を再確認しました。
私は、情報を集める人間です。
構造を読む人間です。
複数の選択肢から、最善のルートを探す人間です。
では、その資質が最も活きる場所はどこか。
考えるまでもありませんでした。
経営企画でした。
経営企画では、情報を集めることが仕事になります。
状況を整理することが仕事になります。
数字や現場の声をもとに、選択肢を提示することが仕事になります。
それは、私の上位資質とかなり重なっていました。
翌朝、私は決めていました。
経営企画への異動を、自分から申し出る。
それは、降格を意味しました。
部長代理から、課長代理へ。
普通なら、避けたい判断です。
でも、私の中では、降格ではなく、場所を変える判断でした。
役職を守って消耗し続けるより、
資質が活きる場所で仕事をする方がいい。
そう考えました。
異動の申し出は、受け入れられました。
経営企画という「資質が活きる場所」
経営企画に移ってから、見える景色が変わりました。
やっていること自体は、急に別人になったわけではありません。
情報を集める。
整理する。
構造を読む。
選択肢を提示する。
それは、以前から私がやっていたことでした。
でも、場所が変わると、同じ行動の意味が変わりました。
部長代理のとき、私の静かな動き方は「やる気がない」と見られることがありました。
経営企画では、同じ動き方が「整理が的確」「分析が丁寧」と見られるようになりました。
自分が変わったというより、
自分の資質が仕事の中心に置かれる場所へ移った。
その感覚に近いです。
資質に合った場所では、消耗の仕方が違います。
同じ時間を働いても、削られていく感覚が少ない。
無理に別人を演じなくていい。
自分の自然な動き方が、そのまま仕事として認められる。
やがて私は、課長へと返り咲きました。
降格を伴う異動から始まりましたが、資質に合った場所で仕事を続けることで、結果的に評価も戻ってきました。
この経験から、私は強く感じました。
役職が自分を活かすのではない。 自分の資質が活きる場所に立つことで、役職や評価が後からついてくることがある。
5年後、資質の出方が変わっていた
2023年6月、私は2回目のストレングスファインダーを受けました。
結果を見て、驚きました。
2018年には30位だった活発性が、2023年には3位になっていたのです。
これは、私にとって大きな変化でした。
ストレングスファインダーでは、資質はその人の自然な傾向を示すものとされています。
ただ、私の体感としては、どの資質が表に出やすいかは、置かれた環境や役割によって変わると感じています。
経営企画への異動。
WordPressの独学。
複数サイトの運営。
AIの活用。
自分で判断し、自分で動く経験。
そうした環境の中で、それまで奥にあった活発性が表に出てきたのだと解釈しています。
一方で、規律性は8位から26位に下がっていました。
部長代理時代の私は、「すべてを正確にコントロールしなければならない」という緊張の中にいました。
その緊張が解けたことで、規律性が前面に出なくなったのかもしれません。
2回の結果を比べてわかったのは、同じ人間でも、環境によって表に出る資質が変わるということです。
ストレングスファインダー34資質の変化
ここでは、2018年12月と2023年6月に受けたストレングスファインダーの結果を比較します。
まず、本文で見ておきたいのは、変化の大きかった資質です。
大きく上昇した資質
| 資質 | 2018年 | 2023年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 活発性 | 30位 | 3位 | ▲27 |
| 着想 | 28位 | 4位 | ▲24 |
| 共感性 | 26位 | 10位 | ▲16 |
| ポジティブ | 27位 | 11位 | ▲16 |
| 達成欲 | 34位 | 19位 | ▲15 |
| 自我 | 17位 | 5位 | ▲12 |
大きく下降した資質
| 資質 | 2018年 | 2023年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 規律性 | 8位 | 26位 | ▼18 |
| 個別化 | 15位 | 32位 | ▼17 |
| 適応性 | 6位 | 20位 | ▼14 |
| 自己確信 | 9位 | 21位 | ▼12 |
| 公平性 | 11位 | 23位 | ▼12 |
変わらなかった資質
| 資質 | 2018年 | 2023年 |
|---|---|---|
| 収集心 | 1位 | 1位 |
| 戦略性 | 2位 | 2位 |
| 社交性 | 31位 | 31位 |
私の中核にあったのは、やはり収集心と戦略性でした。
情報を集める。
構造を読む。
選択肢を探す。
この核は変わっていません。
一方で、環境が変わることで、活発性や着想のような資質が前に出てきました。
つまり、資質とは固定されたラベルではなく、環境によって表に出る順番が変わるものだと、私は感じています。
参考:全34資質の順位変化を見る
| 資質 | 2018年 | 2023年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 収集心 | 1 | 1 | — |
| 戦略性 | 2 | 2 | — |
| 最上志向 | 3 | 8 | ▼5 |
| 未来志向 | 4 | 15 | ▼11 |
| 分析思考 | 5 | 6 | ▼1 |
| 適応性 | 6 | 20 | ▼14 |
| 内省 | 7 | 9 | ▼2 |
| 規律性 | 8 | 26 | ▼18 |
| 自己確信 | 9 | 21 | ▼12 |
| 慎重さ | 10 | 13 | ▼3 |
| 公平性 | 11 | 23 | ▼12 |
| 成長促進 | 12 | 17 | ▼5 |
| 目標志向 | 13 | 14 | ▼1 |
| コミュニケーション | 14 | 7 | ▲7 |
| 個別化 | 15 | 32 | ▼17 |
| 信念 | 16 | 12 | ▲4 |
| 自我 | 17 | 5 | ▲12 |
| 運命思考 | 18 | 24 | ▼6 |
| 学習欲 | 19 | 29 | ▼10 |
| 親密性 | 20 | 16 | ▲4 |
| 責任感 | 21 | 25 | ▼4 |
| 指令性 | 22 | 18 | ▲4 |
| 調和性 | 23 | 27 | ▼4 |
| アレンジ | 24 | 28 | ▼4 |
| 回復志向 | 25 | 22 | ▲3 |
| 共感性 | 26 | 10 | ▲16 |
| ポジティブ | 27 | 11 | ▲16 |
| 着想 | 28 | 4 | ▲24 |
| 原点思考 | 29 | 33 | ▼4 |
| 活発性 | 30 | 3 | ▲27 |
| 社交性 | 31 | 31 | — |
| 競争性 | 32 | 30 | ▲2 |
| 包含 | 33 | 34 | ▼1 |
| 達成欲 | 34 | 19 | ▲15 |
ビジネススクールで気づいたこと
2023年、私はストレングスファインダーに関する民間資格を学ぶビジネススクールに通い始めました。
しかし、途中で辞めました。
理由は、内容が悪かったからではありません。
私の資質と、学び方が合わなかったからです。
決められたカリキュラムに沿って、型の中で学んでいく。
それよりも、自分で情報を集め、自分なりに構造化し、自分の経験と照らし合わせながら整理していく方が、私には自然でした。
ここでも、同じことに気づきました。
ストレングスファインダーそのものにも、自分に合った使い方があります。
誰かに正解を教えてもらうために使うのか。
自分の判断の根拠を確認するために使うのか。
自分の経験を言語化するために使うのか。
私に合っていたのは、後者でした。
本を読んで終わりではなく、
診断を受けて終わりでもなく、
自分の経験と照らし合わせながら、使える言葉に変えていく。
それが、私にとってのストレングスファインダーの使い方でした。
後日談——その人物が言いに来た日
数年後のことです。
当時、私に厳しい言葉を伝えた人物が、部長の立場になりました。
ある日、その人物が私のところに来て、こう言いました。
「自分の辛さを理解できるのは、あなただけだ」
私は、何も言わずに聞きました。
かつて「やる気がない」と評された私が、今度は、その人の言葉を受け取る立場になっていました。
この出来事を、勝ち負けの話にしたいわけではありません。
ただ、資質に合った場所に立つことで、人は少しずつ余白を取り戻すのだと思います。
余白があるから、相手の言葉を受け取れる。
自分を責め続けるだけではなく、相手の苦しさも見えるようになる。
肩書きではなく、資質に沿って立つこと。
その積み重ねが、人間の厚みをつくっていくのだと感じました。
ストレングスファインダーを活かしたい方へ
ストレングスファインダーは、受けるだけではあまり意味がありません。
診断結果を見て、
「自分はこういう人間なんだ」
と納得するだけでは、現実はあまり変わりません。
大切なのは、その結果を使って、自分の場所を問い直すことです。
私がすすめたい問いは、次の3つです。
1. 今の仕事で、上位5資質を使えているか
まずは、自分の上位5資質を見てください。
その資質を、今の仕事で使えているでしょうか。
たとえば、私の場合は、収集心、戦略性、分析思考が上位にありました。
それなのに、すぐ動くことや、外向きに熱意を見せることばかり求められる場所にいると、資質が活きにくくなります。
上位資質を使えていないなら、努力不足ではなく、場所が合っていない可能性があります。
2. 評価されない理由は、能力不足か、場所のズレか
評価されないとき、人は自分の能力不足だと考えがちです。
でも、必ずしもそうとは限りません。
同じ資質でも、場所が変わると評価が変わることがあります。
私の静かな整理力は、ある場所では「やる気がない」と見られました。
でも、経営企画では「分析が丁寧」「整理が的確」と評価されました。
自分が悪いのか。
能力がないのか。
それとも、資質が活きる場所に立てていないのか。
この問いを持つことが大切です。
3. 役職よりも、資質が活きる場所を選べるか
役職は大切です。
収入も大切です。
周囲からの見え方も、無視はできません。
でも、それ以上に大切なのは、自分の資質が活きる場所に立てているかどうかです。
私は、部長代理という役職を手放しました。
一時的には降格でした。
でも、その判断があったから、経営企画で自分の資質を使えるようになりました。
降格は、必ずしも後退ではありません。
場合によっては、資質が活きる場所へ移るための、戦略的な撤退になることもあります。
まとめ——自分を変える前に、場所を疑う
ストレングスファインダーは、自分を変えるための診断ではありません。
少なくとも、私にとってはそうでした。
私にとってのストレングスファインダーは、自分のまま、どこに立つかを選ぶための道具でした。
自分を変えようとしていたとき、私は「やる気がない」と言われました。
自分の資質に合う場所へ移ったとき、同じ自分のまま評価が変わりました。
この経験から、私は思います。
うまくいかないとき、最初に疑うべきなのは、自分の人格ではありません。
自分の努力不足だけでもありません。
まず疑うべきなのは、場所です。
今の場所で、自分の資質は使えているか。
今の役割は、自分の自然な動き方と合っているか。
自分を削らなくても成果を出せる場所に立てているか。
ストレングスファインダーは、その問いを立てるための道具になります。
役職より、資質が活きる場所を選ぶ。
それが、私がストレングスファインダーを血肉にして得た、一番大きなアクションプランです。

